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排出事業者

排出事業者とは、事業を行うことで廃棄物を排出する事業者のことをいいます。排出事業者には、産業廃棄物の適正な処理が義務付けられていますが、産業廃棄物処理に係る許可を取る必要はありません。建設業を例とした場合、建設工事の元請事業者と、例外として認められた下請事業者は、産業廃棄物収集運搬業の許可をとる必要がありません。この場合には、元請事業者と下請事業者双方が排出事業者責任を負うこととなります。

上記の例外にあてはまらない下請事業者は、産業廃棄物収集運搬業の許可をとらなければなりません。

排出事業者責任

排出事業者責任とは、産業廃棄物は、排出事業者が最後まで責任をもって処理をする、ということです。具体的には、産業廃棄物の収集運搬から、破砕、圧縮、埋立などの最終処分に至るまでのすべての工程を排出事業者が責任をもって処理することを言います。しかし、これらの作業は、必ずしも排出事業者自身が行う必要はなく、産業廃棄物の収集運搬業者や処分業者に委託して行わせることも出来ます。実際には、ほとんどの排出事業者が処理業者に委託して産業廃棄物の処理を行っています。

そこで重要なことは、産業廃棄物の処理は処理業者に委託して終わりではないということです。排出事業者には産業廃棄物の処理について、最後まで責任をもって処理することが定められています。そのため、排出事業者には処理業者の行った産業廃棄物処理に対する監督責任が求められることになります。

具体的な排出事業者責任は次の通りです。

1. 委託先選定に関係した責任

産業廃棄物処理は、「収集運搬」と、破砕・埋立などの「処分」の二つに分かれており、処理業者はそれぞれの処理業務についての許可を有していなければなりません。そのため、排出事業者は「収集運搬」と「処分」に関した許可を持っている産業廃棄物処理業者に業務を委託する必要があります。許可を持たない処理業者に産業廃棄物の処理を委託することは認められていません。

違反した場合の罰則:5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、又はその併科

2. 委託内容に関係した責任

排出事業者が産業廃棄物の処理を処理業者に委託する場合には、下記の委託基準を満たした処理業者との間で委託契約書を締結することが必要です。なお、この委託契約は必ず文書で結ばなければなりません。口頭での契約は認められていません。

違反した場合の罰則:3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科

委託基準

1. 委託先事業者が産業廃棄物処理業の許可を有していること

委託先事業者の許可期限が切れていないかどうか確認する必要があります。(産業廃棄物処理業の許可は5年ごとに更新することになっています。)

2. 処理を委託する産業廃棄物の品目が、委託先事業者のもっている産業廃棄物処理業の許可のなかに含まれていること

産業廃棄物の種類は法律で20種類が定められています。一度の申請ですべての種類の産業廃棄物処理の許可を取得することは出来ますが、通常は処理業者が行っている事業の範囲や、所有している産業廃棄物処分場の処理施設の種類などから、20種類のうちの一部について許可を取得している業者が多いようです。そのため、排出される産業廃棄物の品目を確認した上で、その品目の処理についての許可を持っている処理業者に委託する必要があります。

なお、産業廃棄物処理業者には、産業廃棄物収集運搬業者と産業廃棄物処分業者の二つがありますので、排出事業者は両方の業者と委託契約を結ぶ必要があります。

3. 廃棄物処理法に規定された内容を含んだ契約書によって、委託契約がなされていること

委託先処理業者との間では、必ず委託契約書を取り交わさなくてはなりません。契約書に記載する内容については、廃棄物処理法に関連した法令に載っていますが、すべてを網羅した契約書のひな形が産業廃棄物協会で作成されています。

措置命令について

措置命令とは、違法な産業廃棄物の処理が行われて生活環境の保全に支障が生じたり、又は支障が生じるおそれがある場合に、都道府県知事が排出事業者、産業廃棄物処理業者に対して、その支障の除去などの措置を命じることをいいます。(廃棄物処理法第19条の5)

措置命令の対象となる違法な処理は次の通りです。

1. 無許可の処理業者に産業廃棄物処理の委託をすること。
2. 委託基準に違反して産業廃棄物処理の委託をすること。
3. 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の不交付、虚偽交付、不記載、不回付、不送付、不保存を行うこと。
4. 電子マニフェストの虚偽登録、虚偽報告、不報告を行うこと。
5. 不法投棄、不法焼却など産業廃棄物の処理基準に違反した行為を行うこと。
6. 排出事業者、産業廃棄物処理業者などに違反行為を要求、依頼、示唆をしたり、又はそれらの行為を助けたりすること。

排出事業者が措置命令の対象となるのは上記のほかに、下記に掲げる事項が起きた場合も含まれます。

1. 産業廃棄物の処理を委託した処理業者が違法な処理を行った場合に、その処理業者が資力などの点で、廃棄物の除去を行う能力がなかったり、又、あったとしても不十分なものである場合、排出事業者が措置命令の対象となる。
2. 産業廃棄物の処理を委託した処理業者が不適正な処理を行うことをあらかじめ知っていた場合、排出事業者が措置命令の対象となる。
3. 著しく低廉な価格で、産業廃棄物の処理を処理業者に委託した場合、委託をした排出事業者が措置命令の対象となる。この場合には、たとえ委託基準や産業廃棄物管理票(マニフェスト)の管理に問題がなくても、排出事業者が措置命令の対象となることがあるので注意が必要。

排出事業者が措置命令に違反した場合:5年以下の懲役又は、1,000万円以下の罰金又はその併科

法人等に対する両罰規定「廃棄物処理法32条」

法人の代表者、法人若しくは個人事業者の代理人、使用人、その他の従事者が「廃棄物処理法」に違反した処理を行った場合には、実際に違反行為を行った者は当然として、その雇い主である法人や個人事業主にも同罪の罰金刑を科する、というのが「法人等に対する両罰規定」です。

この規定の特色は、法人の代表者やその代理人、そしてその法人の業務に従事する者が次に掲げる違反行為を行った場合には、その法人に対して科せられる罰金の上限が3億円とされていることです。

罰金額が3億円となる違反行為

1. 許可を得ずに産業廃棄物処理業を行うこと。
2. 不正な手段によって産業廃棄物処理業の許可を取得すること。
3. 許可を得ずに事業範囲を変更すること。
4. 不正な手段によって産業廃棄物処理業の範囲の変更する許可を取得すること。
5. 環境大臣の確認を受けずに産業廃棄物の輸出を行うこと。
6. 産業廃棄物の不法投棄を行うこと。
7. 産業廃棄物を不法に焼却すること。
8. 不法投棄、不法焼却、不法輸出については未遂についても1億円の罰金が科せられます。

産業廃棄物管理票(マニフェスト)について

排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する際に、産業廃棄物の種類、数量、形状、荷姿、収集運搬業者名、処分業者名、最終処分の場所、取扱上の注意事項等を「産業廃棄物管理表(マニフェスト)」に記載することが義務付けられています。マニフェストへの記載によって、産業廃棄物の流れを自ら把握・管理するとともに、産業廃棄物が処理されたことを最後までチェック出来、また取扱上の注意事項を処理業者に確実に伝えることが出来ます。

マニフェストの発行は排出事業者によって行われます。マニフェストには電子マニフェストと紙マニフェストの2種類がありますが、一般的には、紙マニフェストが使われているようです。紙マニフェストは7枚つづりになっており、排出事業者、収集運搬業者、処分業者がそれぞれ控えを持つとともに、収集運搬業者と処分業者が、産業廃棄物処理を終了した段階で、処理の終了日時、担当者名などを記載したマニフェストを排出事業者に戻すこととなっています。

排出事業者は、戻ってきたマニフェストの内容を、手持ちの控えと照合して確認し、最終的に返送されてきた日時を記入して一連の流れが終了することとなります。

マニフェストには、発行してから排出事業者の元に戻ってくるまでの期限が決められています。期限内に発行したマニフェストが戻ってこない場合には、排出事業者はすみやかに状況を把握し、生活環境の保全上の支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講じるとともに、送付期限を超えてから30日以内に都道府県知事に報告しなければなりません。

委託契約書とマニフェストの内容は当然一致しなければなりません。もしも、一致しない場合には、不正な処理が行われていることとなり、廃棄物処理法違反として罰則が適用されます。また、マニフェストと委託契約書の内容が一致していたとしても、実際の現場において内容と違う処理がなされていた場合には当然、廃棄物処理法の罰則が適用されます。

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